
1967年に創業し、主に地金を扱った高品質なジュエリー・アクセサリーなどを扱う専門商社であるBICO・GHI株式会社。同社が長年培ってきた知識と経験を生かし、公式ライセンス商品とキャラクターの魅力を融合させた新たな挑戦として展開しているのが、ECブランド『金きゃらじゃぱん』です。
さまざまな製品を扱う中で特に注目されたのが、2025年1月に引退した「ドクターイエロー」をモデルにした株式会社JR東海エージェンシー様(以下、JR東海エージェンシー様)とのコラボレーション企画。公式ライセンスを得て実現した『923形ドクターイエロー T4編成 純金コレクション』は、同社にとってEC事業の大きな節目となりました。
今回は、本プロジェクトを担当いただいたBICO・GHI株式会社で取締役・NB本部長を務める中尾さま、本社営業部課長の篠﨑さま、そして日本テレビアート(以下、日テレアート)からデザイナーとして参加した勝俣、杉浦とともに、これまでの取り組みとこだわりのポイント、そして得られた成果を振り返ります。
ーー 貴社が運営しているECサイト『金きゃらじゃぱん』について教えてください。
中尾:『金きゃらじゃぱん』は、公式ライセンス商品やキャラクターとのコラボレーション商品を通じ、お客様の「好き」を形にするブランドであり、それらを扱うECサイトです。1967年に創業して以降、長年にわたって地金製品を取り扱ってきた経験と、それに裏打ちされた品質、そこに遊び心あるデザインを融合させた商品を取り扱っています。
商品の価格帯は2万円弱から600万円前後と幅広く、平均すると10~15万円前後となります。最近では4万円弱の価格帯である「純金カード」が人気ですね。地金製品はその資産性や希少性を重視されることが多く、40〜60代の年齢層のお客様が中心です。
ーー 今回の取り組みでは、『金きゃらじゃぱん』内に特設されたWebページ(ランディングページ以下、LP)『923形ドクターイエロー T4編成 純金コレクション』のウェブデザインと商品撮影をお任せいただきました。まずは企画の経緯について教えてください。
篠﨑:大規模展示会のブースで、今回の企画におけるライセンサー様であるJR東海エージェンシー様のご担当者とお話しさせていただいたことがきっかけです。その後の商談の場で、お祝いごとと地金製品の相性の良さ、黄色と金色の親和性が高いことから「ドクターイエローの引退記念として、地金製品を企画しましょう」と提案させていただきました。
単なるグッズ販売ではなく、ドクターイエローの引退を記念した製品であること、高品質・高価格な地金製品によってJR東海エージェンシー様のブランド価値を高めるお手伝いができることなどを評価いただき、『923形ドクターイエロー T4編成 純金コレクション』のプロジェクトが立ち上がりました。
ーー ウェブデザインに関して、どのような課題を抱えていたのでしょうか?
篠﨑:当時はまだ社内にLP制作のリソース、知見がなく、LPのデザインや制作を内製化できない状況でした。そのため、他社の制作会社さんにお力添えいただいてウェブページやLPを制作していたのですが、制作会社さんによってはひとつのページ制作に3〜4カ月かかることもあり、販売スケジュールに支障が出ていました。
制作スケジュールが長引くことはビジネスモデル上、大きな問題です。基本的にライセンス契約は1年単位で締結され、締結後から製品の企画・製造、そしてLPの制作がスタートします。つまり、LPのローンチの遅れは実際に販売できる期間が短くなることを意味し、機会損失に直結する問題なのです。
また、LPの企画やデザインにおいては、公式ライセンス商品ならではの表現・見せ方に関する制約があり、それらを厳守した進行が求められる場面が多くありました。公式ライセンス商品を扱った企画やデザインの実績があまりない企業にとって、ガイドラインといったさまざまな制約を考慮して進行するのは簡単なことではありません。そのため、公式ライセンス商品ならではの制約を十分に理解しないまま進行すると、フィードバックや修正対応に時間と手間がかかってしまい、制作スケジュールが遅れてしまう原因になりかねないのです。
ーー 公式ライセンス商品のスチル撮影に関しては、どのような課題を抱えていたのでしょうか?
篠﨑:前提として光が反射する地金製品は撮影が非常に難しく、撮影だけでなく照明の技術力が求められ、金の撮影を専門に扱うカメラマンさんがいるほどです。そのため、撮影に難航して所要時間が1〜2時間延長となるトラブルが常態化していました。ようやくスチル素材が納品されても、商品ページには使用できない写真が多々含まれていました。
ーー どのようなきっかけで、弊社をお知りになったのでしょうか?また、ウェブデザインをお任せいただいた決め手をお聞かせください。
篠﨑:LP制作に課題を感じていた時期に「LP 制作会社」「LP 制作費用」などのキーワードで検索し、日テレアートさんのコラム記事に出会ったのがきっかけです。大手である日テレグループの制作会社さんなので、「私たちの問い合わせは後回しにされるのでは……」との不安があったのですが、問い合わせに対するレスポンスがとても早く、驚きました。その後のご提案では、商品理解に基づいた丁寧な企画と、こちらの要望のハードルを超える提案力に惹かれましたね。
杉浦:ありがとうございます!具体的なご提案の前に、まず「金」と「ドクターイエロー」という2つの商品特性を理解するため、ターゲットを徹底的にリサーチしました。40〜50代の鉄道ファン層に刺さるビジュアルとキャッチコピーを意識するだけでなく、私たちがテレビ番組のウェブデザイン制作で培った、ファーストビューの視覚的な訴求力を生かし、商品の魅力を第一印象で伝えることをご提案しています。
篠﨑:課題として感じていたライセンスの取り扱いと、企画やデザインの意図を酌んでいただけるかどうかについては、日テレグループとして多数のライセンスを取り扱ってきた実績があるため、安心感がありました。ご提案のクオリティ、ライセンスの取り扱いに対する安心感が決め手となり、ウェブデザインをお任せすることを決定しています。
ーー ドクターイエローが引退する、2025年1月をマイルストーンとしてプロジェクトを進行させていただきました。制作スケジュール全体に対する評価をお聞かせください。
篠﨑:2024年の夏頃に初回のご提案をいただき、そこから1〜2カ月で全体像を固め、商品サンプルの完成を待って年末にスチル撮影、年明けにLPを公開するというスケジュールで進めました。秋頃の時点で取り組みのクオリティに満足していたため、スチル撮影も追加でご依頼しています。
商品サンプルの制作に時間がかかってしまったのですが、仮の画像をもとにLPの構成を先行して進めていただきました。おかげで商品サンプルが届いてからすぐにスチル撮影を実施でき、LPのデザインにもすぐに反映できて、とてもありがたかったです。
勝俣:公式ライセンス商品のスチル撮影にあたっては、まず香盤表を事前に作成する上でカメラのアングルやセッティングの変更が最小限に抑えられるように配慮しました。撮影自体はプロのカメラマンにお任せすることになるので、満足がいくスチル撮影ができつつも決められた時間内に完了するよう心がけています。
篠﨑:年末年始を挟んだタイトなスケジュールでしたが、日テレアートさんに主導していただきスケジュールを間に合わせることができました。おかげで販売期間をしっかり確保でき、商機をしっかり捉えることができたと思います。
ーー 制作させていただいたLPと純金カードの券面デザインに対する評価をお聞かせください。
篠﨑:LP全体がとても見やすく、商品説明の文章も読みやすい構成で、購入ページまでの動線が明確でした。企画の背景説明に関するコンテンツを読み終えたタイミングで商品一覧に自然につながる流れも、よく設計されていたと感じています。
特に印象に残っているのが「シークレットデザインの商品」の見せ方です。ドクターイエローのファンに向けたシークレットデザインの商品を企画したのですが、商品一覧からはそのデザインが分からないようぼかしていただきました。鉄道ファンの興味をかき立てるデザインが功を奏し、実際にその商品が最も売れています。
勝俣:LPのデザインに加え、追加でご発注いただきました『923形ドクターイエロー純金カード 1g』の券面デザインも担当しています。シークレットデザイン以外は春夏秋冬の4つとなっており、それぞれの季節感・雰囲気を演出すること、金という特殊な素材に印刷されることが重要なポイントでした。高額な商品のために試行回数を重ねられない中でも、過去の経験を生かしながら完成イメージを作成して色調整を行っています。
ーー スケジュールとデザインに対して評価いただき、ありがとうございます。プロジェクト全体では、どのような成果が得られましたか。
篠﨑:当初は『金きゃらじゃぱん』全体で1年間は赤字でも仕方ないという想定でしたので、LP制作を含むコスト回収には時間がかかると見込んでいました。しかし、ドクターイエローの公式ライセンス商品は予想を大きく上回る反響をいただき、初年度で想定の3〜4倍のスピードで初期投資を回収できています。
LPの制作スケジュールが想定通りだったおかげで事前に準備してきた広告・PRの展開も滞りなく進行でき、ドクターイエローに関するトレンドの波にうまく乗れました。また、ライセンサーであるJR東海エージェンシー様からも高く評価いただいており、「見やすいデザインで、思わずクリックしたくなりました」とのお言葉をいただきました。
ーー 今回のプロジェクトを受け、EC事業全体の展望をお聞かせください。
中尾:ECという新たな事業へのチャレンジを通じて、多くの経験と手応えを得ています。まず3年以内には利益の道筋を立て、できれば5年以内に事業の新たな柱になるまで育てたいと考えています。
今回のプロジェクトでは、日テレアートさんという業界外の専門家と関われたこと自体が大きな学びであり、良いチャレンジになったと感じました。私たちの強みである地金製品の企画・製品作りに注力していき、それを広く世に届けるためのLPや写真、製品デザインで引き続きお力添えいただければ嬉しいですね。