社員インタビュー
スピードと正確性が武器のオールラウンダー ┃ テレビグラフィックデザイナー・村上慎一郎
スピードと正確性が武器のオールラウンダー ┃ テレビグラフィックデザイナー・村上慎一郎

画面上にレイアウトされて情報を視聴者に伝えるテロップ。バラエティ番組を賑やかに彩ったり、ニュースを分かりやすく視聴者に伝えたりするためには欠かせない要素です。

 日テレアートのテロップデザイン部でテレビグラフィックデザイナーとして働く村上慎一郎は、それらのテロップ制作を行っている人物のひとり。スピードと正確性が求められる報道番組をメインで担当している村上に、仕事内容ややりがいを聞きました。

画面に映るあらゆる文字情報を作り、番組のカラーを表現

  • テレビグラフィックデザイナーというお仕事ですが、一般の方はどんなことをしているか知らない人ばかりだと思います。そもそもテロップとはなんですか?

村上:テロップというのは“カメラを通して撮影していないけれど、テレビ画面に表示される文字や画像の情報”のことを指します。たとえばバラエティ番組で芸人さんがボケた時に表示されるテロップなどのイメージが分かりやすいですかね。バラエティのテロップは番組のカラーを決める部分でもあるので非常に目立ちますし、だからこそ作り手もデザインに凝ったり、動きを付けたりと“番組らしさ”が伝わるように作る必要があります。

 でも、テロップの本領ってそれだけじゃないんです。報道番組を例に挙げると、キャスターが読み上げるニュースのタイトルテロップだけではなく、キャスターの名前や「サイドテロップ」と呼ばれる画面脇に配置しているニュース内容の要約、静止画CG(スタジオ内のディスプレイ、または視聴者側のテレビ画面)に表示されるグラフや図表のフリップまで、テレビの画面構成に入っているものはほぼ全て我々テロップデザイナーが制作しています。パワーポイントのスライドを、デザイン的にも機能的にもレベルを上げたものを作っているというイメージが近いかもしれませんね。

部内には満遍なく色々な番組のテロップデザインを担当している人もいますが、僕はほぼ報道番組の担当です。

  • 報道とバラエティではテロップに求められるデザインも異なるのでしょうか。

村上:報道はシリアスなニュースから嬉しい話題まで、どんな内容にも対応できるような色と書体選びが必要です。それに対して、バラエティは演者の方が誰かにツッコむときに筆文字を使って勢いを出すなどの遊びやデザインの余地がありますね。もちろん番組ごとにも大まかなトンマナの違いはありますし、ディレクターごとに演出の好みもある。それにテロップの出し方にもトレンドがあるので、常に自分の周りにアンテナを張って、アップデートすることが大切といえます。

 テロップは視聴者に正確な情報を伝えるだけでなく、表現方法としての側面も持つツールです。効果的に番組のカラーを演出することに加え、視認性をベースに映像との調和を図っており、常に視聴者に一目で伝わるレイアウトを意識しています。

圧倒的な物量をこなしつつも「間違えないことが大前提」

生放送番組は情報の鮮度が重要。放送中も随時情報が更新されるため、テロップデザイナーは常に時間と戦いながらデザインを制作しています。緊張感のある現場の中で、村上はどのように仕事をこなしているのか聞きました。

  • 1日にどれぐらいの量のテロップを制作するんでしょう?

村上:部全体でだいたい1日で3000〜4000枚ほど制作します。僕は平日15時50分から放送の『news every.』を担当しているのですが、依頼が届き始めるのは14時頃。タイトなスケジュールですが、ニュースは鮮度が重要ですからね。それに交通データマップなど情報が逐一変わるものは最初に渡されたデータが更新されたタイミングで急きょ作り直すこともよくありますし、ギリギリまでスライドの順番を組み替える必要があるので、スピード感が非常に重要です。

 しかし、大前提なのは間違った情報を出さないこと。情報が更新された際に急いで作って間違った情報を出してしまうぐらいなら、更新前の情報で進行する決断もときには必要だと思っています。

  • 企業でたとえると、1日でプレゼン用の資料3000枚を間違えることなく完成させていると考えれば、そのすごさが分かりやすいかもしれませんね。

村上:まぁでも、慣れです。制作依頼が届いて締切時間を聞いたら「あと5分」みたいなこともよくあるので、もう感覚がマヒしているかもしれません(笑)。ディレクターさんやADさんが作業してる僕の周りを囲んだ状態で「この絵はここに置いて」と作業するような正念場を毎日のように経験していますので。今日もそろそろ制作の依頼が届きはじめている頃なのですが、大丈夫です。

 そう聞くと仕事に追われているように思われるかもしれませんし、テレビ業界と言えば不規則な勤務時間のイメージもありますが、僕の場合はそうでもありません。毎日同じタイミングで制作依頼が届いて、それを仕上げて……、というふうに比較的規則正しい生活を送ることができています。

▲文字だけのテロップを作ることもあれば、表を作ったりイラストを使ったりとその表現方法は実に様々。「作るものが毎回違うので飽きないところが気に入っています」と村上は話します。
  • タイトなスケジュールのなかで、クオリティを上げるために心がけている工夫はありますか?

村上:他のデザイナーもきっと同じだと思いますが、引き出しの多さは制作物の質に直結します。「普段の暮らしのなかでも広告が目に入ったら、そのデザインの意図について考える癖をつけるべきだ」と入社当初に先輩から言われたことなのですが、いまだに続けているんです。その練習のおかげで、パッとアイデアがひらめきやすくなったかもしれません。

テロップのみにとどまらず、動画制作も経験

テレビグラフィックデザインの要として活躍している村上は、日本テレビが系列局29社とともに作り、50年以上にわたって社会の様々な事象に目を向けてきた『NNNドキュメント』のオープニング制作を任されるほどに信頼されています。しかし、入社当初は苦戦する場面も少なくなかったそうです。

  • そもそもテレビ業界に入った経緯は?

村上:もともとデザインをやりたくてCG制作の専門学校に入ったのですが、同級生も番組セットやポスターを作りたい人や番組ディレクターをやりたいという人が多く、テレビグラフィックデザイナーが第一志望という人はいませんでした。当時の自分の認識でも裏方中の裏方だったので、キャリアデザインの第一選択肢として候補に挙がらなかったところが正直なところです。学校を卒業後、日テレアートでフリップ作りなどのアシスタントとして働いていたときに、当時の先輩に誘っていただいて契約社員になり、のちに正社員として雇用されることになりました。

 テロップ制作を始めて最初の1~2年は、生放送のスピードについていくのに精一杯でした。放送中もどんどん制作依頼が入ってくるし、しかも間違えてはいけないというプレッシャーもありますからね。そんな中で放送に間に合わせたときに番組担当者から「村上さんが対応してくれて良かった」との言葉をもらえるようになり、今ではとても面白い仕事だと感じています。

▲村上が担当した『NNNドキュメント』のメインオープニング
  • その後『NNNドキュメント』のメインオープニングも担当していますが、 どういった経緯で依頼があったんでしょう?

村上:『NNNドキュメント』は50年以上続いている長寿番組であり、日テレの取材力を象徴する硬派なドキュメンタリーということで、プレッシャーもありましたが、自分ひとりの責任のもとで担当できたのでやり甲斐がありましたね。

『NNNドキュメント』は毎回特集するタイトルロゴやオープニングが異なる構成になっていて、僕は「91歳のチアリーダー」という回のタイトルロゴとオープニング動画の作成を担当したこともあります。

村上:このときはVTRの文字やナレーションが一切入ってない、カメラで撮っただけの映像素材から作業が始まりましたね。それを見ながら、自分が取材対象者をどういう風に感じたか、もしくは他の人が取材対象者を見たときにどう思うのかを想像しながら案を出していきました。オープニングの撮影から編集ロゴ制作動画付け、Twitter展開用のアイコン制作まで一通り担当するという貴重な経験をしました。

また、報道局の方では数年前からSNSやインターネットにおけるコンテンツに力を入れており、その動きが始まる当初、専任のデザイナーとして僕に依頼をいただきました。各種SNSで使用する「日テレNEWS」YouTubeチャンネルや「日テレ鉄道部」YouTubeチャンネルのロゴやヘッダー画像、サムネイルなども様々制作しています。

クライアントとタッグを組み、総合的なプロモーションを展開したい

  • 動画編集までおこなうのは、テレビグラフィックデザイナーの職掌としては、かなり特殊なケースですよね?

村上:確かに特殊かもしれません。日テレアートは美大を卒業して入社する人も多いのですが、僕はデザインに関する知識や経験、スキルが他の人よりも少なかったですからね。だからこそ、機会をいただいたら何でもやろうと思っているんです。自分がやったことのない領域でもチャレンジさせてくれますし、学びたいことを会社に申し出れば応えてくれるので、働いていて非常に楽しいですね。

  • コア業務だけじゃなくて周辺領域のスキルまで学んでいるから、仕事の幅や深みが出るということもありそうです。

村上:専門学校時代はCG学科でしたが、当時はCGのくくりもフワッとしていて、3Dモデリングの授業もあればHTMLも学んだし、 Illustrator やPhotoshopに関する講座もあったので、そこでも広く浅く学んでいたのが今に繋がっているのかもしれません。今後はゴリゴリに凝ったCGを作ったり、アーティストのプロモーションビデオを編集したり、さらに仕事の深みを出すのが個人としての目標です。

 また、日テレアートには多彩な得意分野を持ったスタッフが集結しているので、クライアントとガッチリとタッグを組んで、コーポレートロゴの制作からサイトのリニューアル、NNN系列の番組ネットワークを活用したプロモーション展開まで考えてみたいですね。これまで自分が培ってきた幅広いスキルも活かせるのではないかと思っています。


日テレアートではセットデザインはもちろん、グラフィック、CG、Web制作など総合的なクリエイティブ制作がご提案可能です。 お気軽にご相談ください。

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